最適な蓄電池容量 | 容量と自家消費カバー率

必要な蓄電池容量

はじめに

前の記事(自家消費が可能な電力量 | 買電量と売電量の関係)で、自家消費の可能な最大電力量は、買電量と売電量が重なる部分であるとして、我が家の実測データを元に具体的な数値で示しました。

この記事では、いよいよ具体的な蓄電池の容量の決め方を考察します。

利用目的は自家消費の最大化

そもそも、最適な蓄電池の容量は、蓄電池の利用目的によって異なります。停電時への備えが最大の目的であれば、停電時に使いたい電力量、その日数等から容量を算出すればよいことになります。

一方、多くの方にとっては、太陽光発電の余剰電力の有効活用、つまり自家消費を最大化し、経済的効果を得ることが主目的になると思います。

自家消費目的の場合の容量の考え方については、蓄電池のおすすめサイトでも様々な記載があり、平均の発電量を基準とする考え方、消費量を基準とする考え方等が紹介されております。

但し、かなりざっくりした印象であり、実際は日々の天気に変動や季節による変動も大きいので、本当に平均ベースでよいのか、また、具体的に最適値はあるのか等についても疑問を持っていました。

そこで、この記事ではより厳密に365日の買電量と売電量の日々のデータから最適な蓄電池容量を求めます。

バランスの取れた蓄電池容量とは?

下図は、前の記事(自家消費が可能な電力量 | 買電量と売電量の関係)で示した自家消費可能な電力量です。具体的には、日々の買電量と売電量の大小関係を比較し、値が小さい方を選択して時系列に並べたものです。

年間365日の自家消費可能な電力量

単純に考えると、最大値(この例では19kWh)までカバーできる容量があれば理想ですが、さすがに過剰な印象で、現在の市場の製品、価格を考えても、現実的な選択肢ではありません。

やはり、蓄電池容量に対する自家消費への貢献の度合いで判断したいところです。そこで、蓄電池容量を0から1kWh単位で増加させ、それぞれの年間蓄電量を算出し、自家消費可能な全電力量(緑の値の合計量)に対する割合を求めました。

試算結果 | 自家消費可能な電力量のカバー率

下図にその結果を示します。左側には例として、容量4kWhと12kWhの場合の蓄電量イメージ図として、自家消費分のカバー率を示しています。右側はそれらを一般化して容量毎のカバー率をグラフにしたものです。

蓄電池容量と自家消費可能な電力量

容量を増やすにつれて自家消費可能な電力量は増加しますが、徐々に頭打ち傾向になります。どこが最適とするかは難しい判断ですが、11kWh付近で90%のカバー率になり、ここから頭打ち傾向になります。

14kWh程度まではカバー率が上昇しますが、それ以上の容量となると、蓄電池容量を増やした分の恩恵は限られてきますので、これ以上はもう十分という印象です。

ここでは、総合的に90%のカバー率を妥当な目安とし、結果として11kWhが妥当な容量と判断します。もちろん、この前後であれば十分にバランスはとれていると言ってよく、蓄電池による自家消費増大の恩恵を得ることができます。

予算に余裕があれば大きめの容量でも

予算との兼ね合いになりますが、可能であれば、少し余裕を持った容量であるほど望ましいです。この試算はあくまでも太陽光の余剰電力による1日単位の自家消費の最大化という観点ですが、下記の点からも容量の余裕はプラスに働きます。

容量の余裕によるプラス効果

  • 消費量が少ない時期(主に4-9月):翌日の自家消費に繰り越すことが可能。翌日の天気が悪い場合でも自家消費率が高められる。
  • 消費量が多い時期(主に冬季):太陽光発電のみでは足りない分を前日の夜間電力にて蓄電に利用することも可能(自家消費ではないが経済効果の向上が見込める)

但し、これらは副次的効果と考えておき、プラスアルファとして期待する程度がよいと考えます。

まとめ

この記事では、太陽光発電の余剰電力を自家消費するという目的で、蓄電池の容量の算出方法、具体的な値について考察しました。算出の流れをざっとまとめると以下の通りとなります。エクセルベースで算出可能であり、簡単な関数の知識があればそれほど難しくはありません。

蓄電池の容量の算出方法 ※単位はすべてkWh

  1. 過去365日分の買電量(a)、売電量(b)のデータを取得。
  2. 日々毎に買電量(a)、売電量(b)の値を比較。
    小さい方を自家消費可能な電力量(c)とする。➡上記の緑のグラフ
    cを365日分合計し、年間の自家消費可能な最大電力量(C)を求める。
  3. 蓄電池容量をxとし、自家消費可能な最大電力量(c)と比較。
    小さい方を自家消費量(d)とする。
    dを365日分合計し、年間の自家消費量(D)を求める。
  4. DをCで割って、これを自家消費カバー率とする。
    自家消費カバー率が90%程度となる蓄電池容量xを選択。

我が家のケース(年間発電量5400kWh、年間消費量7200kWh)では、11kWhが最適な値となりました。蓄電池の専門サイトではオール電化の場合で概ね10kWh程度と記載されていることが多いですが、我が家のケースではほぼほぼ合致しているとは言えます。

次の記事では、この試算をベースに、年間発電量と消費量を変化させ、目安となる最適な蓄電池容量を一般化してみます。

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