はじめに
多くの方々にとって、最も関心のある判断ポイントだと思われます。もちろん、メーカ、機種、販売店の選択による初期費用、および発電量、消費量等の日々の運用に依存しますので、一概に言うことはできません。
その前提で少し乱暴ですが、ざっくりまとめるのであれば、「現時点では基本的には20年程度を見ておくのが無難。但し、今後の電気代高騰、売電単価低下次第で短くなる。」ということになります。
計算モデルと前提条件
感覚的に大枠を捉えるため、余剰電力(今まで売電している分)の一部を蓄電池に蓄え、日没後の電力消費に充当するモデルを仮定します。日没後から夜明けまでの消費量に該当する電気代が削減できるという考え方です。
我が家をモデルケースとして、下記の数値を前提とします。
- 最大充放電容量/日:12kWh
➡例えば、テスラパワーウォールを90%で運用した場合の容量
- 蓄電池からの充当される消費量の買電単価:40円/kWh
➡東京電力の電化上手プランにおける朝晩単価+再エネ負担金+燃料費調整額(2023年7月)
- 売電単価: 11円/kWh
➡ENEOSの買取プラン(2023年4月時点)
年間の費用対効果
単純に蓄電地容量に買電単価を掛ければ(=A×B)、一日あたりの支払削減額に該当します。費用対効果としては、蓄電池に充電せずに売電していれば得られた収入(=A×C)を差し引く必要があります。よって、年間の費用対効果の式はA×(B-C)×365となり、約13万円となります。
この数値だけ見るとかなりの経済効果と言えますが、10kWh程度以上の容量を持つ蓄電池は設置工事等を含めると200万円を超えるため、元を取るには15年以上はかかることになります。
更に言うと、上記の計算は毎日フル充電、フル放電を前提とし、かつ朝晩料金に充てるという理想な条件ですので、実際は下記の要因からここまでのパフォーマンスを得ることは難しいです。
- 太陽光で毎日フル充電できるわけではない
パネル容量によりますがフル充電できる日は年間で7-8割程度になります。
- 朝晩時間で全容量を自家消費できるわけではない
冬季は朝晩消費の割合が高いですのでかなりの量が消費されます。一方、冬季以外は朝晩消費の割合が減り、買電単価の安い夜間消費に充てられることになります。
- 経年劣化等により最大充電量も減少?
蓄電池は長期繰り返し利用によるある程度の性能低下は避けられないようです。ほとんどのメーカで10年等の長期の動作保証をしていますが、その際に保証される充電量は初期容量の50-70%となっています。
費用対効果の向上要因
一方、電力消費パターンや工夫次第では費用対効果の向上も見込めます。
- 昼間料金での利用が多い方
単価が高い昼間料金での時間帯に買電が発生する方(=太陽光発電の発電量をこえる程の出力の高い電気機器を使われる方)は、買電分は蓄電池から給電されるためは費用対効果が高くなります。
具体的に、IHは最大出力が3kWもあり、夏場のエアコンの利用時等は発電量を超えるケースも考えられますが、超過分は蓄電池から給電されるため基本的に買電は発生しません。
また、冬季の16-17時は日照的に発電が見込めませんが、その時間帯に電力利用が多い方でも蓄電池から給電されるため費用対効果の向上が見込めます。
- 夜間電力による充電の活用
夜間電力分と朝晩電力の単金の差分を利用し、朝の電力消費が多い方は、夜間電力での充電を活用することで費用対効果の向上が見込めます。特に朝の発電量が少ない冬季に有効です。
- 今後の電気代の上昇
昨今のエネルギー供給事情を取り巻く環境(全世界的な電力需要増加、エネルギー調達リスク、原発建替問題、自然エネルギー移行コスト負担等)を考えると、中長期的には上昇トレンドにあるとみてよいと思います。
更には、昨今の物価の上昇、給与水準上昇によるインフレが持続し、インフレ率2%が達成できるのであれば、10年後には2割程度の物価上昇となり、結果として電気代も相当分あがると想定されます。
- 売電単価の下落
現在11円/kWhで売電できておりこの数値をもとに試算しましたが、下記の関連記事で触れている通り、快晴時の日中の買取需要は年々下がっており、太陽光発電の普及に伴い単価は下がることが予想されます。
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まとめ
料金プランや電気の使い方次第で年数の増減はありますが、ベースラインとして20年程度は覚悟しておく必要があります。
一方、電気代の上昇具合によっては、一気に短縮する可能性も考えられ、余裕資金による投資として位置づけられる方や、停電時の保険等の他の価値を認められる方は、十分検討に値すると考えます。
次の記事では、蓄電池設置をお勧めできる方についてまとめています。
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