運転モードと運転管理 | 似ているようで違いもあり

蓄電池選びのポイント

はじめに

蓄電池システムの基本性能は、蓄電池容量、パワコン出力などのハードウェア性能によってほぼ決まります。一方、売電単価に応じ売電する場合や、天気予報に応じて夜間電力から充電する場合等、パフォーマンスの最適化にはソフトウェアの役割も重要です

一般にどの蓄電池システムにおいても、どのような使い方をメインにするかに応じて動作の最適化ができるようにソフトウェアが組み込まれており、運転モードという形で提供されています。

それぞれの運転モードでどのような機能まで含むか、どのような詳細設定ができるかについては、メーカによっても様々です。カタログレベルで不明な点は事前に確認しておくことをお勧めします。実績のある販売代理店、施工店であれば、情報提供していただけるはずです。

また、運転管理という点では、リモートで確認できることや、後で運用データを一覧化できることも地味に重要です。

この記事では、蓄電池を選ぶポイントとして、パフォーマンス向上や日々の使い勝手を左右する、運転モードの設定や、運用状況の管理方法に関して考察します。

運転モードのバリエーション

ほとんどのメーカでは、自家消費優先/売電優先という観点を踏まえて、専用の運転モードを選択できる設計としています。天気予測に応じたAI制御の説明も加わり、全体を把握するのが少し難しくなっている印象があります。

ここでは、運転モードを理解するためのポイントとなる考え方を整理します。

自家消費優先

蓄電池システムは、パワコン出力を制御することによって任意のタイミングで充放電を行うことができます。

蓄電池システムは電流センサにより電力会社側の電流量(流入/流出)を常時モニタしています。自家消費モードの場合は、電力会社側の電流量が常にゼロになるように、蓄電池パワコンの入出力を制御しています。

自家消費の最大化が主目的であればこの制御で十分であり、ベーシックなモードとして定義されていることが多いです。その目的からグリーンモードと呼称されているケースも多いです。

蓄電池設置時の電力の流れ(自家消費優先)

+夜間電力からの充電の組み合わせ

翌日に十分な日照量が見込めない場合は、安価な夜間電力を蓄電し、日中に利用することで経済的効果を高めることができます。

これは余剰電力の自家消費ではありませんが、蓄電池システムの更なる有効活用であり、経済効果を高めるという観点でも重要な機能です。

翌日の発電量、電力消費量を推測する必要がありますので、過去の電力消費量の動向や、外部の日照量予測の情報を活用します。AI機能として紹介しているメーカもあります。制御上、契約料金プランの情報が必要になりますので、その情報を設定することになります。

運転モードの選択としては、自家消費モードの付加機能的な位置づけとされているケースや、後述の時間帯別制御に位置付けられているケースもあり、メーカにより様々ですので、実際の動作を理解しつつ、使いこなしていく必要があります。

売電優先

太陽光発電の余剰発電を活用する自家消費とは反対の考え方で、充電は常に夜間電力から行い、夜間以外の時間帯の電力消費に充当する使い方になります。

日中は、自家消費分は蓄電池から供給し、太陽光発電分すべて出力する制御も設定可能な機種もありますが、そのような運用をするとFIT制度ではダブル発電と定義され、売電単価が下げられます。

経済モードと呼称されていることもあります。FIT期間中の方はこちらを選択することになりますが、卒FITまでの過渡的な運転モードと捉えておくのがよいと思います。

蓄電池設置時の電力の流れ(売電優先)

時間帯別制御、カスタム制御

全条件を踏まえた運転を目指したモードとして設定されていると考えてよいです。経済的効果を最大とする理想的な運転モードを目指していくと、最終的には、売電および買電の電力料金プランの情報を考慮する必要があります。

それらの情報を設定して、後は全てお任せする使い方になりますので、詳細動作はブラックボックスです。様々な条件によって動作が変わりうるため、利用者にとって本当に最適な制御を行っているかどうかは、運転管理にて発電量、売電量、充電量の推移等を見て、確認する必要があります。

卒FITの方は、自家消費モードを基本とし、天気予測による夜間充電を組み合わせる形となると考えられます。メーカ、機種によって、実際にどのように設定するか予め確認することをお勧めします。

テスラのパワーウォールについては、別カテゴリ「テスラのパワーウォール」の下記の記事も参照ください。

運転管理の重要性

太陽光システムと比較すると、蓄電池システムは運転状況を管理する重要性が高いです

太陽光システムの場合は運転状況(主には発電量、売電量)を把握しても、それで我々が何か工夫できる余地はほとんどありません。システムに異常が発生していないか知る程度の用途になります。

一方、蓄電池システムの場合は、日々の運転状況、過去のデータからフィードバックを得ることで、節電、節約のための行動につなげることができます。

やはり、蓄電量が尽きて買電が発生するのはもったいない感覚になります。日照量が十分でなかった日は蓄電残量をチェックし、必要に応じて下記の工夫をすることもできます。

  • 日没後のエアコン等の電気の利用を控える
  • 調理時間の短い料理にする
  • お湯を張るのでなくシャワーで済ませる

もちろん、無理に行う必要はなく、あくまでもゲーム感覚、工夫の範囲という意味です。

運転管理用デバイス、モニタ

太陽光システムを同様ですが、蓄電池、パワコンなどの設備自体は、普段手に届きにくい所に設置されます。よって、運転管理の情報は運転管理用デバイス、モニタを通じて得ることになります。

実装方法として、主には下記の2パターンに分けられます。

  • 蓄電池専用の運転管理用デバイス、モニタを設置
    伝統的な手法です。専用のデバイス、モニタであれば、いつでも画面を見れば常にリアルタイムに運転状況を確認でき、簡単に設定変更できます。また、メーカ/機種によっては、情報をクラウドにあげて、インターネットを介して、専用ページから運転履歴を確認することができるサービスもあります。
  • スマホのアプリを利用
    スマホアプリを利用することで、どこにいても手元でリアルタイムに動作確認、設定変更できます。アカウントを共有すれば家族みんなでアクセス可能です。必要に応じて詳細のデータも数クリックでダウンロードできます。

    専用デバイス分のコストが削減でき、取付、配線工事も不要となります。主に、テスラやファーウェイ等、蓄電池としては新興のメーカが採用しています。

まとめ

蓄電池システムを設置して運用を始めると、想定通りに蓄電池を活用できているが気になります。実際に、運転モードや設定によってはパフォーマンスにも差が出てきますので、設置してしばらくの間は、まめに動作チェックする必要があります。

その際に操作するのは運転管理デバイスとなりますので、操作性やリモートアクセスできるか、使い勝手は重要です。蓄電池選びの際に、不明な点があれば、積極的に販売代理店、施工店に確認することをお勧めします。

次の記事では、蓄電池システムの機器の設置・配電工事に関して、押さえておきたいポイントを考察します。

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