時間帯別制御のパフォーマンス|夜間電力の活用はお得?

テスラのパワーウォール

はじめに

最近の蓄電池システムには、翌日の天気、正確には日照量を予測して、発電量が不足しそうな場合は、夜間電力を利用して蓄電する運転モードが備わっています。夜間と日中の電力の買電単価の差を利用して、経済的利益を得ることができます

この日照量予測に基づく制御は、一般にAI制御等とも呼ばれており、経済性を高めるアピールポイントとして、蓄電池のカタログでも詳しく説明されている場合が多いです。

テスラのパワーウォールにも、しっかりこの機能が搭載されており、時間帯別制御という運転モードをクリックするだけで、日照量に応じて自動的に夜間における放電の停止や、蓄電が行われます。

近年は観測技術やデータ処理能力の向上により、天気予報の精度はかなり上がっている印象ですが、100%ではありません。果たして、どの程度の精度が得られているのか、この記事では、時間帯別制御の実力について、実績データを踏まえて分析、考察してみます。

パワーウォールで日照量を予測した運転が可能?

日照量を予測した運転モードについては、パワーウォールのHP上ではあまりアピールされておりません。他の国内メーカのカタログでは大きく宣伝されているので、本当に機能が搭載されているのか少し不安を覚えると思います。また、テスラ社は米国の企業であり、米国での天気は詳しいとしても、日本の天気までカバーできる?というかという疑問もあろうかと思います。

結果としてご心配は不要で、時間帯別制御モードでカバーしています。時間帯別制御モードの動作のために、電気料金プランという設定項目があり、ピーク、オフピーク等の料金時間設定、それぞれの売買電単金を入力可能です。

また、マイホーム情報という設定項目で、自宅の緯度経度情報が管理されます。詳細地域毎の天気予報、日照量予測については、様々な分野に対して普及が徐々に拡大しているところで、他の専門企業が予測サービスとしてビジネスにしている分野でもあり、日本においても情報を得ることは容易だと考えられます。

以上の通り、制御に必要な情報は保持しているので、後はどのように予測アルゴリズムを組んで、動作させるかがポイントになります。なお、時間帯別制御モードの説明には下記が記載されています。相当な自信があるようです(笑)。

蓄えられたエネルギーを使用して、電力料金プランに基づいて節約額を最大にします。最も安いエネルギー請求をもたらします。

(テスラアプリの時間帯別制御の説明よりそのまま引用)

予測誤差による影響

当然ながら、日照量の100%の予測というのは難しいと想定され、実際に使用する消費量も変動しますので、予測誤差として下記の2パターンが発生します。

①夜間電力による蓄電が過剰:本来は太陽光発電分を蓄電できた分が余剰となり売電が発生

②夜間電力による蓄電が不足:単価の高い日中電力による買電が発生

そもそも、昨今は夜間料金単価が上昇傾向であり、日中電力との差が小さくなっている点に加え、売電単価自体が絶対的に低いことを考えると、①の方が気になる誤差です。夜間電力から蓄電をする場合には、5%の変換損失が発生することを考えても、①が多発すると自家消費モード(夜間電力からの蓄電は行わない)のほうが経済的ということもあり得ます。

そこで、①に着目して、時間帯別制御モードとし、実際の料金プランを設定して運用した実際のデータ(2023年9月分)を見てみたいと思います。

運用実績(2023年9月分)からの考察

まず、全般として翌日の日照量に合わせて、しっかり夜間電力による蓄電量の調整は行われています。蓄電量も翌日の日照量に合わせて調整されています。翌日が快晴時は夜間電力の蓄電は行われません。おおむね適切に制御されている印象で、及第点と言ってよいと思います。

精度についていえば、当然限界があるところですが、どちらかというと少し多めに夜間電力を蓄電している印象であり、①の状態が散見されます。

下記の図に一日分の発電量と売電量について、それぞれを軸にして分布図としてまとめました。1つの点が1日分を表しており、2023年9月の30日分がプロットされていることになります。

発電量と売電量という観点では、蓄電池がフルに蓄電された後に、売電が始まりますので、本来は、右下の水色の部分にプロットされることになります。左上の領域は、発電量の割に売電量が多い部分であり、これは蓄電池が夜間電力によって一定量蓄電されているために発生することになります。

発電量と売電量、分布図

少し、細かい指摘にはなりますが、実際に詳細データを見ても、今回はおよそ7日程度については、夜間電力からの蓄電は不要、あるいは蓄電量がもっと少なくても十分という結果には見えます。

無論結果論ではあり、金額的な差も、仮に最適制御ができた場合と比較して、月数百円レベルですので、十分なパフォーマンスといってよいと思います。

まとめ

今回の記事では、時間帯別制御モードについて少し掘り下げてみました。結果として、夜間電力を少し多めに活用している印象ですが、言い換えると常に多めに蓄電しておく思想でもあり、いざという時も踏まえて安心感はあるかもしれません。

個人的には、多めに夜間電力を蓄電してしまうともったいないと感じることがあり、普段は曇り程度であっても自家消費モード中心で運用し、本格的な雨の場合に、時間帯別制御モードに切り替えています。このあたりのtipsについても、今後記事にまとめたいと思っています。

時間帯制御モード自体も、日照量の予測精度の向上やプログラムのアップデートにより、更なる精度向上も見込めるかもしれません。今後も、より経済的な運用について、試行錯誤していきたいと思います。

前の記事

タイトルとURLをコピーしました