はじめに
蓄電池システムを選ぶ際に、様々な比較検討すべき項目がありますが、その中でも蓄電池容量に次いで重要なのはパワコンの出力です。
蓄電池容量はどれだけ電気を貯めておけるかという観点で、その性能はイメージしやすいと思います。対して、パワコンは単位時間当たりに蓄電池に対してどれだけ電気を出し入れできるか(パワコン出力)が、最も重要な性能指標となります。
このパワコン出力が家を丸ごとバックアップできるか(全負荷対応)、一部のみをバックアップできるか(特定負荷対応)にも大きく関連してしてきます。加えて、太陽光発電のパワコンを兼ねることができるか(単機能/ハイブリッド)も重要な検討ポイントです。
この記事では、パワコン出力、全負荷/特定負荷、単機能/ハイブリッドに焦点を当てて考察します。
パワコン出力 | 低いと必要な電力が取り出せない
パワコン出力もメーカ/機種によって幅があり、低出力機種だと2kW程度、高出力機種だと6kW程度です。蓄電池容量の大きい機種ほどパワコン出力も大きい傾向にはあります。
前の記事(蓄電池ではなく蓄電池システム | 全体構成を把握しよう)で触れたとおり、蓄電本体とパワコンは機能的には独立していますので、必ずしも蓄電池容量が大きい機種がパワコン出力が大きいという訳ではありません。蓄電池容量の割にパワコン出力が低めであったり、その逆のケースもあります。
パワコン出力は必要な時に必要な量を取り出す性能ですので、蓄電池容量に十分な容量があったとしても、パワコン出力以上の電力は取り出せません。蓄電池から取り出せない分は電力会社からの電力で補充されます。
一時的に電力の利用が集中したとしても、契約電力量の範囲内であれば、今まで通り不便なく電気は使えますので問題はありませんが、パワコン出力の超過分は買電することになります。
蓄電池残量が残っている時に、買電が発生するのを避けたい場合は、電力会社との契約電力と同程度のパワコン出力を選ぶ必要があります。
契約電力と同程度のパワコン出力があれば、契約上限レベルの電力使ったとしても、残量がある限りは全て蓄電池システムのみで賄われ基本的には買電が発生しないことになります。
なお、電力会社との契約電力や、使われる電気に関する単位については、別カテゴリ「お役立ち情報&予備知識」にて記事にまとめています。
連携運転(通常時)と自立運転(停電時)
電力会社側の電力連携の観点で、パワコンの動作には連携運転と自立運転があります。
- 連携運転
電力会社側(系統側とも呼ばれる)の電力に連携しつつ、宅内に電力を供給。停電ではない通常時の運転。 - 自立運転
パワコンが単独で自立的に動作し、宅内に電力を供給。停電時の運転
パワコンの出力という観点では、メーカ、機種によっては、連携運転と自立運転のパワコン出力が異なる製品もありますのでよく確認することをお勧めします。
自立運転に関していえば、自立運転は停電時という非常時に行われるもので、基本的に電力消費を抑える配慮が働くと思いますので、その意味で自立運転のパワコン出力が低めでも許容範囲といえます(もちろん性能的には出力が高いに越したことはありません)。
一方、連携運転に関しては、パワコン出力が低いと普段使いでの買電量に影響が出ます。先に触れたとおり、充電量自体が十分だとしても、パワコン出力を超えた分は買電が発生します。
例えば連携時のパワコン出力が3kW程度だと、電気機器の利用が集中した時や、IHで高火力利用時(最大3kW)には不足する可能性が高いです。不足分は電力会社からの電力で充当されますので全く問題ないとはいえ、十分な充電量があるのに買電が発生するのは少し勿体ない感じがします。
普段の日常において、電気の使い方について意識したくはないと思いますので、最低4kW程度はほしいところです。理想的には先に触れたとおり、契約電力と同程度が望ましいです。
(参考)太陽光発電システムのパワコンについて
- 連携運転、自立運転という観点は、太陽光発電システムのパワコンも同様です。但し、停電時の自立運転は非常用という位置づけで、専用コンセントからのみ給電となる製品がほとんどです。
- 蓄電池システムが併設されていれば、停電時でも、蓄電池システムが自立運転している限り、蓄電池システムに対して連携運転を行います。
全負荷対応と特定負荷対応
全負荷対応、特定負荷対応の違いは、停電時の自立運転にて200Vに対応しているか否かです。メーカによっては、200V対応の機器を追加設置する必要があります。
加えて、全負荷での運転を一定時間カバーするには、それに見合ったパワコン性能、蓄電池容量が望まれます。そのため、全負荷対応として一体化パッケージされている製品は概ねパワコン性能も高く、蓄電池容量10kWh程度以上を有していることが多いです。
この観点は停電という非常時の動作の話と割り切ることができれば、あまり重要ではないとも言えますが、やはりお勧めは全負荷対応です。
全負荷対応の方が総合性能面で優れており、元々200V対応で追加機器が不要なメーカもあります。逆に、特定負荷対応は必ず専用の分電盤を設置する必要があります。
オール電化でもともと消費量の多い方には、性能的に全負荷対応が選択肢となるかと思います。
単機能とハイブリッド
単機能/ハイブリッドとは、パワコンの守備範囲による違いです。
- 単機能
蓄電池の入出力に特化したパワコン - ハイブリッド
蓄電池の入出力と、太陽光発電からの入力の両方をカバーするパワコン
パワコンの最も基本的な機能が交流直流変換であり、ハイブリッドではその機能を蓄電池と太陽光パネルの両方に対して無理なく共用できます。
何と言っても、太陽光からの蓄電時の変換損失(約5%)を抑えることができるのは大きな魅力です。仮に、太陽光発電と蓄電池を共に新規設置するのであれば、ハイブリッド型一択だと思います。
一方、単機能では既設の太陽光発電設備に後付けする際のメリットが大きいです。既設の太陽光パワコンに問題がなければ、高機能なハイブリッドに置き換える方が費用負担も増え、太陽光パネルとの相性についても考慮が必要となります。
但し、卒FITを迎えた方は、既設の太陽光パワコンの寿命も気になるタイミングですので、ここは迷うところだと思います。
私はパワーウォールを選択しましたが、容量や費用を加味して総合的に判断した結果となります。パワーウォールは後付けを想定したマーケット戦略で単機能でその分一体化小型化が図られており、設置工事も比較的シンプルです。
また、既設の太陽光パワコンもまだまだ元気に稼働しているのも判断理由の1つでした。寿命が来た際は、その際に太陽光システム用の最新の単機能パワコンに置き換えればよいという判断です。
まとめ
蓄電池システムでは、パワコンの性能、機能に関連してパワコン出力に加えて、全負荷対応か特定負荷対応か、単機能かハイブリッドかという選択肢を問われることになります。
全てのメーカが全ての選択肢を用意しているわけではなく、テスラなどの新しいメーカは後付けメインとして、選択肢を全負荷対応に絞ることで競争力のある製品を出しています。選ぶ側としては非常に悩ましいところです。
次の記事では、蓄電池の運転モードと運転管理について考察します。
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